日本の最西端に位置する与那国島(画像は Nao Iizuka/flickr )

台風21号が沖縄県・与那国島に残した傷跡は、大きいようだ。

国内で過去3番目の最大瞬間風速81.1メートルを記録した巨大台風によって、人口約1500人の同島では住宅10棟が全壊したほか、300棟以上損壊し、約400棟が停電。断水や電話がつながりにくい状態が起こり、電力会社や通信会社の作業員たちが現場に入り、ライフラインの復旧を急いでいる。

「国境の島」を守るのは、2人の警察官と2丁の拳銃

与那国島は日本最西端に位置する「国境の島」。付近を航行する中国船が頻繁に目撃されるなど、安全保障上、極めて重要な場所に位置する。

1996年に行われた台湾総統選挙の時には、台湾独立の思想を持っていた李登輝氏の優勢が報じられると、中国は台湾海峡にミサイルを撃ち込み、武力で威嚇した。その時の水柱や轟音は、多くの与那国島民が見聞きしており、島民は台湾有事の際は、与那国島も無事ではいられないと感じたという。

にもかかわらず、島を守るのは2人の警察官と2丁の拳銃のみと極めて心細い状況が長く続いた。また、同島では、長年、自衛隊配備の問題が議論されてきたが、2010年の尖閣沖中国漁船衝突事件以降、防衛省は配備を加速させようとした。しかし、島民の間で意見が割れ、外間守吉町長は基地設置について、「迷惑料」として10億円を要求するなど、多くの混乱が生じてきた。

その後、議論が進展し、沖縄防衛局は2014年、自衛隊駐屯地となる町有地について、与那国町と賃貸借契約を締結。来年3月末までに工事を完了させ、150人規模の陸上自衛隊員を配備する予定だ。

今回の被害は自然災害だが、侵略の意図を持った他国による武力行使が起きたときのシミュレーションも必要だろう。中国が軍拡路線を取り続ける限り、与那国島や台湾を含めた南西諸島は、常に危険にさらされている。

このほど成立した集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法と合わせて、日本の国防強化は急務だ。被災した方々には心よりお見舞い申し上げたい。だが、その一方で、日本人としてはこの台風の傷跡から国防の教訓を学びたい。(冨)

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