米グーグル社がこのほど、持ち株会社「アルファベット」という親会社を設立し、グーグル検索やその他の事業を子会社にすることが報じられた。

グーグルは、660億ドル(約8兆円)もの収入がある検索サービスの他に、新規事業などに投資するグーグル・ベンチャーズ、次世代技術の開発研究をするグーグルX、高速インターネットサービスを提供するグーグル・ファイバーなどを手がけてきた。

今回、それらの事業が全てアルファベットの傘下に入ることになった。

「脅かす存在が現れる前に、改革を始めようとしている」

一見、成功している企業に見えるグーグルが、なぜこのような構造改革に踏み切ったのか。

グーグルの最高経営責任者(CEO)で共同創業者であるラリー・ペイジ氏がアルファベットのCEOとなり、同じく共同創業者のセルゲイ・ブリン氏がアルファベットの社長に、グーグル会長のエリック・シュミット氏はアルファベットの会長となる。新会社を立ち上げた理由は、彼らが、日々のグーグルの経営から一歩退いて、会社の方向性を長期的・大局的に見るためという。

中心的な事業であるグーグル検索から得られる利益を、会社の未来のためにどのように活用するかを考える時間を確保したい、ということらしい。

米ワシントン・ポスト紙は、新陳代謝が特に激しいIT業界で、「グーグルを脅かす競争相手が現れる前に、改革を始めようとしているのではないか」としている。

未来に約束された成功はないが、立ち止まれば滅びる

今回の構造改革がどのような結論を導くかは分からない。この改革によって本業である検索サービスの格を落とし、「グーグル」というブランドを自ら貶めることになる、という批判もある。

しかし、熾烈な競争社会で他社が努力している中、立ち止まってしまえば、その組織は滅びる。同紙は、過去に消えて行った通信会社のモトローラやパソコン会社のアポロと、今も存続しているアップル社やスターバックスとの差は、後者が自らを変革し続けたからだと指摘する。

今回の改革の本質は、「組織を率いる幹部たちが、イノベーションに専念できるようにする」ことだろう。

目まぐるしく変化する時代を生き延びていくには、未来に何が必要とされるかを見通し、常に新しいモノやサービスを創造し、顧客を感動させ続けなければいけない。未来に約束された成功などないが、「現状維持は死」と理解して、改革に着手したグーグルの今後を見守っていきたい。(中)

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